連日「最恐!危険生物アドベンチャー」展の話題をご紹介してきましたが、今日はちょっと違う話題を。
まず、これをごらんください。↓↓↓ いったい何でしょう??? 直径5cmはある、目玉焼きのような物体。 円くて大きな銀色の部分は、今にもこぼれそうなゼリー状の半液体でプルプルしています。 真ん中には黄身がなく、笹の葉のようなスリットが黒く染まっています。 この物体は、とある生きものの体の一部です。 その生きものとは・・・ パソコンでご覧の方、左の画像を上から下までずら~~っとスクロールしてご覧ください。 長さ1m26cmもあります。 萩博ブログを何年も前からご覧の方々は、「あ、過去の萩博ブログでこんなの見た!」と思いだされたでしょう。 そう、深海魚の一種、サケガシラです。 かつては「テンガイハタ」の名前でご紹介したこともありましたが、最近の研究により、このあたりのものはサケガシラらしいことが判明しました。 私(堀)の本業は危険生物ではなく(部分的には当たっていますが)、あくまでも海洋生物担当の研究員。 昨日(8/7)のこと、以前にも萩博物館に珍生物をご寄贈くださった萩市三見の三浦さんが来館され、「イカを釣っていたらこの魚が釣れた!」と持ってきてくださいました。 ■標準和名:サケガシラ ■サイズ:全長126cm ■採捕日:2012年8月6日 ■採捕場所:萩市三見 鯖島の西沖 ■採捕方法:イカ釣り 夜にイカ釣りをしていたらこの魚が食いついてきたそうで、当時は元気ハツラツ! なんと、餌ごとイカ釣り針を胃の奥の方にまで飲み込んでしまったそうです。 そのまま☆になってしまったとのことで、胃にイカ釣り針が入ったまま寄贈され、当館でもそのまま標本にすることに。 サケガシラはかの有名なリュウグウノツカイのなかまの深海魚。 萩をふくむ山口県日本海側は水深200mより浅い大陸棚がずらーっと広く広がっているにもかかわらず、このような深海魚がちょくちょく現れるため、昔から不思議がられていました。 今年の2月に山口県水産研究センターの河野さん、下関市立しものせき水族館(海響館)の土井さんと共著で「2005~2009年の山口県日本海域における海洋生物に関する特記的現象」(山口県水産研究センター報告9号:pp. 1~27)を発表しましたが、その中におもしろいデータがあります。 過去12年間に山口県日本海側に現れたサケガシラ類のサイズを月別にグラフにしたところ、山口県で見つかるサケガシラが春→夏→秋→冬と大きくなっていくのです(手のひらサイズから2mぐらいにまで!)。また、冬にお腹に卵をかかえた大きな母親も見つかったこともあります。 かつては、サケガシラたちは遠い海を隔てて東シナ海の方から いやおうなしに流されてきて、命からがら泳いでいるところを、萩など山口県の沿岸に漂着するのでは?と私は考えたこともありました。 しかし、上記の三者の共同論文では、ここで見つかるサケガシラたちは山口県沖の日本海をすみかとしていて、しっかりここで繁殖している可能性が高いと記しました。 このたび三見でとれたサケガシラも、上記のデータで夏ごろに現れるサイズと合いますし、食欲旺盛で元気よく餌に食いついたとのことから、彼ら・彼女らは本当にここの海をすみかとして活発に活動している可能性は十分にあるのではないかと思います。 今後も萩博物館はこうしたナゾをとき明かすため標本を収集し、山口県水産研究センター、下関市立しものせき水族館と共同で研究を進めていきたいと思います。 (堀)
by hagihaku
| 2012-08-08 10:00
| いきもの研究室より
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