海を拓いた萩の人々、3 ~ 海を拓いた萩の船 ~
2015年1月3日、萩は昨日までと打って変わり穏やかな晴天となりました。
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萩博物館「海を拓いた萩の人々」展のご紹介を進めます。
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「海を拓いた萩の船」のコーナーです。
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今回の展示における目玉資料の一つである「山口県鱶延縄漁船雛形」です。
船長2メートルを超える大きな漁船模型です。
市立函館博物館所蔵資料で、お借りして遥々空路移送し展示ました。
125年ぶりに、北海道から萩に里帰りしました。
実は、この明治期の漁船雛形が萩の漁船であり、しかも125年前に北海道にもたらされたものであるということは、今回の展示の準備の中で明らかになりました。
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明治30年代、今から120年近く前に撮影されたと考えられる萩市鶴江の漁船の写真です。
一部地域では「鶴江船」と呼ばれ、また「山」口県改良漁船」として全国に紹介された歴史を持ちます。
船とともに写真に納まっているのは鶴江の若連中で、船上には青年たちが立っています。
実は、この船上に立つことができるというのが、この鶴江船・山口県改良漁船の大きな特徴なのです。
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明治29年(1896)に編まれ、各地にもたらされた『日本漁船調査第一報』に採録された「山口県改良鱶縄船」の図です。
山口県において鱶(サメ)を漁獲するために用いられた船で、甲板を張って準水密の構造とし、波が舷側を打ち超えてきても船内に水がたまらない当時としては画期的な改良が施されていました。
上でご紹介した漁船がこれで、船上の青年たちはこの甲板の上に立っているのです。
遠洋出漁と操業が可能な優れた船ということで、全国で導入が図られました。
この船に良く似た漁船雛形が北海道の函館に存在するという情報を、10数年前に得ていたのですが、念願かなって実見できたのは2011年の秋のことでした。
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市立函館博物館です。
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調査のためにお訪ねした時のメモ写真です。
漁船雛形は、屋上収蔵庫からわざわざ広い部屋に搬出されていました。
長年の間に幾度が資料の保管先が変わったことにより、付随する情報が不確かになり、展示ができずに眠っていた資料です。
実見しての第一印象は、「やはり『日本漁船調査第一報』に採録された「山口県改良鱶縄船」図や鶴江船・山口県改良漁船に大変良く似ているなぁ~」というものでした。
「長靴を履いた足を振り上げたような」と表現される水押しの形状、船首から船体前部にかけて広く設けられた甲板や舷側の排水口等は、明治期の山口県改良漁船特徴を良く示していました。
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嬉しく幸いなことに、この漁船雛形には櫓が付属していました。
いかがでしょうか?
一部欠損は見られますが、萩地域をはじめとして山口県日本海側で用いられるナガウデの櫓です。
「櫓から見えてくるもの」コーナーでご紹介しましたが、これで艫(船尾)の右舷側で櫓を操作する造りになっていれば・・・・
ところが残念なことに、櫓杭を設け、舵を落とす舵床と呼ばれる部材は失われていました。
そこで次に確認したのは・・・
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櫓腕と船体とをつなぐ綱があることに気付かれると思います。
これを一般的にハヤオ(早緒)と呼びます。
操作中に櫓脚が水中に深く入り込むことで、櫓腕が上方に上がろうとする動きを抑える役割の綱です。
(スイマセン、経験がないと櫓の動きについてはなかなかイメージできないかもしれませんネ)
艫の右舷側で櫓を操作するとすれば、右舷側にハヤオを結ぶ部材が有るはず・・・と雛形の船尾舷腹を確認すると・・・
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果たして船尾右舷側にその部材があったのです。
舷側の上方に設けられた波を防ぐ部材も、右舷側の方は、船尾部分(櫓を操作する部分)が短くなっています。

ナガウデの櫓を艫の右舷側で操作するのは、まさに萩地域をはじめとした山口県日本海側の漁船の特徴です。

「ヨッシャ!」と、思わず拳を握りしめるような興奮を覚えました。

話には聞いていましたが、写真や図面でしか見ることができなかった鶴江船・山口県改良漁船について、具体的に知ることができる資料に出会えたのです。
ようやく、しかも北海道で。

それでは、この漁船雛形はいつごろ、何処の誰が制作し、どのような経緯で函館にもたらされ、何の目的で現在まで保管されてきたのでせうか?
次なる素朴な疑問が湧いてくると思いますが、それについては次回以降また。

・・・つづく・・・  (清水)
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by hagihaku | 2015-01-03 14:23 | くらしのやかたより
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