4/13に萩市三見でとれた深海からのカワイイ訪問者
・・・外套長(胴体の長さ)6cmのサメハダホウズキイカ。 昨日、ブログと記者発表資料で紹介しましたね。そこで今日は、このイカのヒミツの素顔をちょっとくわしく紹介することとしましょう。 今回のサメハダホウズキイカ、実はご寄贈いただいた時点では生きていました。刺激を与えると透明な体をサッと赤く変えたりと、表情豊かでした。しかし・・・、 ← 翌日4/14の朝、残念ながら衰弱。 ・・・しかし、背景の容器の白色が見えるぐらい、よく透き通っていますね。 これだと、海の中で姿が見えにくいので、敵から身を守ったり餌に接近したりするのに便利。よくできています。 ← その後、残念ながら☆になってしまいました。 そこで水から出し、側面から撮影。 体の重みで胴体(「外套」)が少し広がりましたが、「ほおずき」のように膨らんでいるのが分かります。また、表面が「さめはだ」のようにザラザラ。 ・・・それにしても、この写真の撮影中、私はこのイカから 「ある懐かしいニオイ」 が漂ってきているのを感じていました。 どこかで嗅いだことがあるような・・・ 私は頭の中で、その「ニオイ」の記憶をたどっていきました。 ・・すると、ある強烈なモノにたどり着いたのです。それは、今年1/13と2/9に長門市川尻で見つかった「深海のモンスター」ことダイオウイカ! 今回とれたサメハダホウズキイカ、あのダイオウイカと同じニオイがするのです! それもそのはず。 サメハダホウズキイカもダイオウイカも、ふつう私たちが食べるイカと違って、体に塩化アンモニウムという物質を体液に含んでいます。 彼らは海水より密度が小さい塩化アンモニウムを使い、深海で浮力の調節をおこなっているのです。 悪臭というほどではないけれども、決して食べようと思えない独特のニオイ ・・・どうやらその正体は塩化アンモニウムのようです。 ただ、ダイオウイカは塩化アンモニウムが溶けた溶液を体の筋肉の中にあるたくさんの小さな空洞に入れていますが・・・、 サメハダホウズキイカの場合は、胴体をタンクのように使ってタプタプとまとめて貯蔵しています。 サメハダホウズキイカ、だから「ほおずき」のように胴体がパンパンなのですね! ↑左上の写真は、お腹(おなか)側から撮影したものですが、・・・ ← その写真の眼の部分を拡大してみました。 ・・・すると、眼のまわりがギラギラ!まるで、たくさんの宝石がはめこんであるようです。なんとオシャレな! この宝石のように見えるものは「発光器」。海の中で、ここから光を放つといいます。 一番最初の写真のように、サメハダホウズキイカは海中で体のほとんどが透明なので、自分の姿をくらますことができます。しかし、眼は透明ではないのでこうして光を出し、下にいる敵から眼の影が見えないようにしていると考えられています。 発光するのはオシャレではなく、生きていくための工夫だったのですね。 さて、このサメハダホウズキイカ、これまで萩や山口県でどれぐらい採れたことがあったのだろう?と思って、まずは萩博に保存されている田中市郎コレクション(博物学者の故・田中市郎氏が1930~1940年代にためた生物標本)をチェックしてみました。 ← すると、2個体だけ、ホルマリン漬けの標本を発見(胴体の長さ: 左5cm、右8cm)。 さらに、山口県水産研究センターが1992年10月に三隅町(現・長門市)の仙崎湾内で1個体確認しておられるとの記録がありました。 しかし、それ以外は全く標本や記録もなく、萩では約60~70年ぶり3度目、県内の日本海沿岸全体でも4度目という貴重な発見となりました。 それにしても、先月のダイオウイカや昨年のテンガイハタのように、萩近海には深海のいきものたちが次々と出没しますね。 どうして彼らがこの海にちょくちょく現われるのか・・・その理由はまだ謎に包まれています。数年前から、萩博物館、山口県水産研究センター、海響館が共同で調べているところです。 今回のサメハダホウズキイカの標本はもちろん、 萩博物館の今夏の企画展 「君と竜宮城へ ~知られざる深海への旅~」(7/7~9/2)にて、みなさまに展示公開したいと思っています。 今夏は萩博で、深海の生きものたちのささやきを聞いてみませんか。 (堀)
by hagihaku
| 2007-04-18 20:02
| いきもの研究室より
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