去る7/7~9/2に開催した「君と竜宮城へ」展では、幻の珍魚「竜宮の使い(リュウグウノツカイ)」の生の標本(全長2.8m;2006年12月 長崎県壱岐産)をさわったり撮影したりできるイベントを3回ほど開催。
実は、そのイベント当時、参加者の方々からこんな質問をたくさんいただいていました。 -「このリュウグウノツカイ、オスですか?メスですか?」 それに対して私は・・・ -「近い将来、解剖してオスかメスか判定できたらブログで報告しますね!」 と答えていました。 それから1ヶ月半。このリュウグウノツカイは冷凍庫で保管していましたが、仕事が落ち着いたら雌雄の判定をしなければと思っていたところ、 ・・・遠く横浜と那須から、熱烈な深海魚ファンの女性ふたりが助っ人として手伝いに来てくれたのです。 私(堀)と椋木専門員はこれを機会に10/15、このリュウグウノツカイの解剖と雌雄判定を一気におこなうことに! 来てくれたのはkanaさんとsakiさん。ふたりはそれぞれ横浜と那須で動物関係のお仕事をしているため、彼女らの辞書に「気持ち悪い」とか「さわりたくない」などという言葉はありません。ノリノリで「汚れ仕事」を買ってでてくれました。 ← まずは協力の御礼に(!?)、リュウグウノツカイと「川」の字になって記念撮影を。 ← ふたりが連結して並んでも、リュウグウノツカイの迫力は衰えません。なにしろ、長さ2m80cm、体重21kgもある巨体なのです。さあ、オスなのでしょうか?メスなのでしょうか? いよいよ解剖開始! ← まずは体の前2/3ぐらいのところにある肛門からお腹(おなか)に沿って前方へハサミを入れていきます。 お腹を開いてみて、オスなら精巣(せいそう)が、メスなら卵巣(らんそう)があるはず。 リュウグウノツカイは体が長~いので、前方と後方で別の作業を同時進行できます。 ← 前方では、椋木専門員が鰓(えら)と心臓の摘出作業を。 左端は、ああだこうだと指示ばかりして手を汚そうとしない悪の堀。 ← 後方から中部では、kanaさんsakiさんがスムーズに作業を進めています。 ふつう、ハサミを深く入れすぎたりして内臓に傷をつけてしまうことが多いのですが・・・さすが彼女らは動物関係のプロ!全く心配なく、丁寧に着実にお腹を開いていきます。 ← こうして胸から肛門までの開腹が完了! そこに入っていた内臓を丁寧に取り出します。 ・・・ところが、肛門より後方にも内臓の一部(胃盲嚢)が続いていることが発覚! 急遽、ハサミをしっぽの方にも向かって入れていきます。 胃盲嚢は体の後端の7~8cm手前まで続いていました。 ・・・が、2m以上もある細長~くて巨大な「内臓セット」を少しも傷つけることなく摘出することに成功! ↑ こうして、すべての内臓の摘出が完璧に終了! 内臓の大部分は消化器官(胃・腸・幽門垂など)ですが、それに寄り添うような形で、鈍い淡オレンジ色の「タラコ」のような細長い物体がありました。・・・卵巣です! 卵巣があるということは・・・ 「君と竜宮城へ」展・関連イベント参加者のみなさま、お待たせしました。 あの夏、あなたが出会い、触れて一緒に写真を撮った「竜宮の使い」は・・・女性でした!! 女性と分かった瞬間・・・ 「竜宮城からのメッセージ」があの夏以来もう一度、今度は澄んだ女性の声で私の頭に入ってきたような・・・そんな気がしました。 ← 摘出した内臓は、将来の研究に使えるよう、ホルマリン漬け標本に。長いリュウグウノツカイの体の方は、将来のイベントや展示の時に向け・・・冷凍庫で深い眠りに落ちていきました。 こうして2時間にわたる解剖が無事に終了しました。kanaさん、sakiさん、お疲れさまでした!そして、遠くからの協力、どうもありがとう! ・・・しかしその頃、館内の他のスタッフの間で 「バックヤードがどうもナマグサイ・・・?」と、ささやかれていたのは言うまでもありません。 (堀)
by hagihaku
| 2007-10-17 08:45
| いきもの研究室より
|
ファン申請 |
||